やさしい声

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※お山には神様がおるんよ。霧がでとるから。

蒸し暑い日が続いてる。
おかげで今週は、毎日バス通勤だ。
毎朝、通勤のバスの中で目が不自由な若い男性と会う。
いつも、保育園児とお母さんと乗ってくるので、てっきり夫婦かと思っていた。
しかし、そうではないようだ。
いつも同じバス停で乗っているうちに仲良くなったのかもしれぬ。

彼は外見はまったく今風ではない。
大昔「トラック野郎」で見た
「嫁に~こないか~♪」と歌ってた新沼謙治みたいだ。
多分、年齢は20代ぐらいと思うが、見た目はずっと上に見える。
通勤なのだろう。白い杖と小さな黒いカバンを持っている。

だけど、私は彼が子供に語りかける声が好きだ。
とても優しく、やわらかい言葉で話し掛けるものだから
その子供は彼のことが大好きなようなのだ。
私もしばらく、彼以外に、
あんなに優しい声で、親しみをこめて
語りかける声を聞いたことがない。

バスの一番前の座りにくい席に座って、
後ろからその声が聞こえてきたとき、
最初は誰の声かと思った。
体操のおにいさんのようにわざとらしい感じではない。
丁寧で、無理のない、やさしさが伝わってくるのだ。

朝のその声は、電車に乗っているどんなイケメンよりも
できる風のサラリーマンよりも
ふしぎな呪文のように、私の心を捉らえ、離さない。
彼の視力がどのぐらいなのかはわからない。
だけど、人の心は、よく見えているのだろうか。
人には心にも目がある。いろいろなものが見える。
今、それを声を出して、読み上げると、どんな声が聞こえるだろう。

立派な肩書きをもった人や、有名な人でも、
あのようにやさしい言葉で、温かく話せるものだろうか。
いつかあんな風に人に語りかけたい。たとい、私がかなりあではなく、からすであったとて。

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