星のラブレター

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柄にもないと笑われそうだが
実は今一番したいことは
天体観測
ごっこ

である。

空がこうこうと明るい町で生まれた私は、
その昔、星空に憧れた。

なんせ、家のベランダから西を向けば
偽物感に満ち満ちた結婚式場
「ウェディングパレス**」の
サーチライトみたいなネオンが、
空をなめるようになぞる。

南を向けば、テニスクラブのコートが
煌煌と光っている。
ネオンや、テニスの灯りが消えるまで、
星なんかろくに見えやしない。

だけど小学校の授業は残酷で
星の動きについての
授業があったりするのである。

せめて、暗いところにいけば、
少しはよく見えるかもしれぬ、と思い、
星座板片手に
みんなで夜、小学校の校庭に集合した。

あの夜見たものは夏の大三角形。
すぐに消えてしまった北斗七星。

星の灯りは、自分が生まれるより
ずっと前の光なのだと聞き、
理屈がよくわからないが感動した。
私は星に夢中だった。
ねだりまくって、クリスマスには
子供用の小さな天体望遠鏡を買ってもらい、
日々、夜空や近所(※犯罪)を覗いた。

そんなある夜、お母さんが、
台所でらっきょうをむいていた。
カレーの付け合わせにするアレである。

私の家は、大家族だったので、
梅干しでもらっきょうでも、
ばあちゃんとお母さんが密造していた。
そして、子供は通りがかると、
「ちょっといい?」と捕獲されて
手伝わされる。

間抜けにも捕まった私は
無我夢中でらっきょうをむいた。
しかし、ものすごい量で、
むきおわったのは午前零時。

「肩がこった」とお母さんが
家の外にでて、深呼吸をしていた。
私もこっそりついていった。
そんな夜遅くまで起きていることは、
大晦日以外なかったので、
ちょっとした夜遊び気分。
零時ともなると、ネオンも照明も消え、
空はいつもより、少し暗かった。

そのとき、ふと南の空を見ると
ものすごく明るい流れ星が
キラリンッと通った。

線香花火の玉のような明るさだった。
あれは、らっきょうを一生懸命むいた
ご褒美に違いない。
あれかららっきょうを食べると、流れ星を思い出す。

それから何度か、流れ星は見たが、
あれほど明るいのにはご無沙汰だ。

先日、久しぶりに流れ星を見た。
時間が良かったのか、短い時間に
何個もたくさん見ることができた。
今度はちゃんと、お願いをした。
だけどもあんなに、大粒なのは、
なかなか光ってくれなかった。

あぁ、またあの時みたいな
まぶしい流れ星を見てみたい。

プラネタリウムで見る
整理された星空ではなく、
何もない山奥や、
南国の月しか灯りのない砂浜で、
小汚い寝袋から顔だけ出して
のんびり空をみていたい。

一晩中、流れ星を数えて
誰にも話せぬ秘密の話や、
まことにくだらない話がしたいな。

人間の一生は星にくらべたら
ほこりみたいなものだから
仲良くしよう、心の友よ。
どこで出会うも何かのご縁。
生きてることに疲れたら
ひっそり星を見ませぬか。

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